直接的に改善しようとしない
以前、感覚統合についてお話しましたが、今回は感覚統合を養うための遊びを、いくつか紹介していきます。
まず、感覚統合を養うためには、苦手なことを我慢させながら繰り返すことは効果的ではありません。たとえば花粉症の人が杉林で花粉に慣れる特訓をするよりも、マスクや空気清浄機を使用するなどして、症状を抑える工夫をする方が効果的です。
書字が苦手な子どもにも繰り返し書字の練習を行うのではなく、手先の動作が不得意、視線が上手に動かせないなど、苦手な背景を理解し、それぞれに合ったやり方を工夫し、適応力を育てることが大切です。今回は代表的な課題に対して、適応力を高める方法を紹介します。
苦手分野の克服は反復法ではない?
まず、音読の読みとばしや、読み間違いの多い子どもに効果的な遊びです。考えられる原因としては、主に眼球運動の機能が弱いことや、ADHDの不注意の特性が関与している可能性が挙げられます。
眼球運動の機能が弱い場合には「ことば探し」や「バランス遊び」が有効的。「ことば探し」は不規則に並んだ文字列から特定の言葉を見つける方法です。パソコンなどで不規則に文字を並べ、その文字列の中に子どもが興味を示す単語を紛れ込ませます。
たとえば、カレーの具材やキャラクターの名前などを紛れ込ませ、見つけたら丸で囲んだり、指をさして伝えてもらいます。興味のある文字を探すことによって、目を素早く動かせるようになり、特定のものに視点を合わせやすくなる効果が期待できます。
また「バランス遊び」では、平衡感覚とも呼ばれる、全身のバランスを司る前庭覚を働かせ、バランス感覚を育みます。バランスをとることができるようになると、姿勢の軸が安定し、同時に眼球運動も発達。落ち着いた読み書きが期待できます。公園でブランコや動物型の遊具で身体を揺らして遊んだり、家庭では回転イスやトランポリンで、身体を揺らしたりする方法があります。1つの遊具だけでなく、前後、左右、上下の揺れや回転など、さまざまな動きを体験する方が効果的です。
空気が読めるようになる遊び
次は遊びのルールがわからない、守れない子どもに効果的な遊びです。ルールはわかっているが順番を待てない、ルールに納得できないなど、自分だけのマイルールを大事にしている子どもが多いです。ここでは一般的なルールとのすり合わせが必要。大人がルールを理屈で説明し、納得できれば自分の行動をコントロールできるようになっていきます。そうした理解力を高めるための助けとなる遊びが「テレパシーゲーム」です。
これは指示された絵カードを取っていくゲーム。まず、子どもが好きな絵や、写真が入ったカードを10枚ほど用意します。そして、カードを床にランダムに広げて置きます。このカードを大人の指示どおりに取っていきますが、少しずつ指示の難易度を上げていきましょう。
①「○○のカードを取って」と言葉で伝え、指示したカードを取ってもらう
②指をさして「あれを取って」と伝える
③「あれを取って」といいながら、指さしはせずに、視線や表情、アクションで伝える
④「あれを取って」といいながら、身体を動かさずに視線でカードを示す
これは他人が言葉以外の情報で意志を示したとき、それに気づく力がついていくようになります。相手の意図に敏感になり、徐々に空気が読めるようになることが期待できます。また、衝動的にルールが守れない子はバランス遊びが有効です。
このように課題に対して遊びで働きかけることで効果を期待します。子どもたちも楽しみながら取り組めるので、参考にしてみてください。
参考文献:感覚統合をいかし適応力を育てよう2
発達障害の子の読み書き遊びコミュニケーション遊び
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