すべてに反応が薄い
前回はASD「自閉症スペクトラム」を患う、高校2年生F君について紹介しました。今回は4歳G君の事例です。
~4歳G君~
児童発達支援センターの実習で出会った彼は、4歳の時点で発語がありませんでした。嫌なことや苦手なことがあると、急いでその場から離れたり、泣いて拒んだりして気持ちを伝えます。また、たのしいことや興味があることも表現できません。周りから声をかけられても反応しないため、どこまで理解できているのか、どのように感じているのかわかりませんでした。
驚き・好奇心・信頼が見えた
ある日の夕方、彼はいつものようにふらふらと歩き回り、友だちの保護者が迎えに来ても無反応でした。しかし、そこへアフリカ出身の保護者が現れると、彼は驚いたような表情で後退りします。遠くから先生と話している様子をうかがった後、そっと近付き、保護者の腕に手を伸ばしました。彼は腕を撫でると、自分のてのひらを確認しました。初めて人種の違いを知り、興味を示した瞬間です。おそらく肌の色の違いに驚き、なにか塗っているのではないかと感じたのでしょう。触れたらどうなるのか、なにか手につくのかという好奇心が芽生えたのです。
(保護者には職員からフォローを入れました)
また、これまで先生の存在も理解しているのか疑問に感じていました。しかし、初めは怖いと認識していた存在が「先生と話しているから大丈夫」という安心感につながり、勇気を出して近づく行動につながりました。言葉でのコミュニケーションが不十分でも、彼は先生を信頼していることが伝わりました。こうした発見を積み重ねていけば、少しづつ理解していけるはずです。彼の保護者も、七夕には「G君とたくさんお話できますように」と願いを綴り、長い時間をかけて向き合っていく姿勢でいます。
自閉症の男の子が書いた本
実習後はセンターを離れてしまったため、現在のG君の様子はわかりません。しかし、今回の出来事は、普段からほとんどのことに無関心に見える彼の心のなかを、少しだけ理解できた機会だったのではないかと思っています。
うまく気持ちを表現できなくても、彼らには感情があります。私たちにはそれを想像することしかできないため、互いに苦しむときがありました。そんなときに自閉症の男の子が書いた1冊の本に出会いました。文章にすると自分の気持ちを伝えることができるといいます。彼らの気持ちを理解する手助けになるかもしれないと思い、私自身もたくさんの本を読んでいます。今後は記事の内容に沿って、本を紹介していきます。
【書籍名】自閉症のぼくが飛び跳ねる理由
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