心理状態によって変化する症状。「トゥレット症候群」とは?

発達課題

トゥレット症候群とは?

前回はADHDの症状の事例について紹介するなかで、汚言症のある子どもを例に挙げました。汚言症とはトゥレット症におけるチック症状の一種。今回はトゥレット症を説明します。

トゥレット症候群とは、叫び声や咳払い、鼻すすり、同じ言葉を繰り返すといった音声チックを伴い、まばたきや首振り、腕振りなど複数の運動チックが1年以上継続する精神神経系疾患です。1年以内に症状が消失する場合は「一過性チック症」、1年以上継続する場合は「慢性チック症」に分類されます。そして複数の音声チック+複数の運動チックが1年以上続く場合に「トゥレット症」と診断されます。

小学生くらいから症状が現れ始め、もっとも多くみられるのは7歳前後。ただし、2/3以上が成人までに軽症になるとされています。大人になってから再発や発症の例もありますが、非常に稀だそうです。

こうしたチック症状は、不安や緊張、ストレスなどの影響を受けやすいといわれていて、心理状態によって症状の程度が変化します。自らの意志に反して症状が現れ、自分でコントロールできないため、周囲の視線が気になり交通機関を利用しづらいなど、日常生活にも支障をきたします。

小学2年生D君が見せた成長

小学2年生D君も同様に、基本的に保護者が自転車で送迎していました。

ある外出活動で体験施設を訪問したときのことです。D君は動きを伴う活動はたのしめる一方、静かに映像を見る活動は苦手なようでした。座っていられなくなると、次第に動きながら話し始め、最終的には奇声を発します。その日は彼にとって初めての外出活動でしたが、苦い思い出に終わりました。

しかし、その後も根気強く通所し、さまざまな経験を通して成長を見せます。仲のよい友だちができ、表情が明るくなっていったのです。外出活動では電車、バスなどの交通機関を繰り返し利用することで、問題なく移動できるようになりました。それに伴い、外出活動自体もたのしめるようになり、汚言症の症状も軽くなっていきました。家庭の都合で自転車での通所は変わりませんでしたが、保護者の方も大きな成長に喜んでいました。

※前回の記事ではD君の汚言症について触れています。

ストレス軽減への協力体制が大切

トゥレット症の明確な原因はわかっていませんが、大脳基底核の部分に原因があるのではないかという説が挙がっています。これはLD(学習障がい)や、ADHDなどの障がいにも関わる部分です。また、なにかしらの発達障がいを併発する人も少なくなありません。よく見られる併存症は強迫性障がい、ADHD、睡眠障がい、自閉症スペクトラム症、抑うつ傾向などがあります。

治療法の1つは、周囲にトゥレット症の特性を正しく理解してもらうこと。本人の心理的ストレスが軽減されます。こうした環境づくりだけで解決できない場合には薬物療法が必要とされています。

【参考】トゥレット症候群とは | NPO法人日本トゥレット協会
    チック(チック症)とは(症状・原因・治療など)|ドクターズ・ファイル

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